近頃は車内広告を見ると戦争を煽るような感じのものがあってとても気になります。一直線に戦争に傾いていきそうな気分になりとても不気味です。
ミュージカル「ミス サイゴン」に確かベッドの上で死にたいのなら逃げろというセリフがあったように思います。私たち年寄りは病院で死にたくない自宅で最期を迎えたいといいますが、どちらにしてもベッドの上で死ねるのです。しかし、いったん戦争が始まってしまったらベッドの上で死ねない若者たちをたくさん見なければなりません。
私は山手線の車内で米国のひとりの兵士が乗客とトラブルになった現場に居合わせたことあります。彼は何かに憤慨して苛立っていました。私は彼をかばって自分の隣に座らせて気持を鎮めるように話をしました。彼は本音をポロリと口にしました。
自分は家族を残し故郷を離れて喜んで兵士をしているのではないと。興奮して発した言葉とはいえ、私は彼のやり場のない気持が痛いほど分かりました。平和そのものの山手線の車内と戦場を知る若者の存在との大きな落差には寒気さえ感じました。
今日でも戦場でかけがえのない尊い命を落としていく若い兵士たちがたくさんいます。そんな現実があるのに私たち一般市民にとってできることは多くはありません。しかし無闇に敵味方の感情を芽生えさせる言動はそのまま戦争世界のドアを開ける引き金を用意するのと同じです。私たちもマスメディアもこのことをしっかり認識しなければなりません。