残されたご家族のお気持を察すればこのテーマに触れるのは非常に不謹慎ですがお許しください。天才が故に孤独であったかもしれない作家が何を思ってこの世を去ったのか、どういう人生観を持っていたのかどうしても気になります。
三島由紀夫氏の作品には馴染みがあってもその最期を知らない人も今では多いでしょう。私は三島由紀夫氏が市ヶ谷自衛隊駐屯地で同志と自決した時(1970.11.25)にはテレビを観ていました。突然緊急ニュースとして女性アナウンサーが非常に興奮して言葉も定まらない様子で三島由紀夫氏の自決を報じたのを今でもはっきり思い出します。
私には「潮騒」などで知られる天才作家三島由紀夫氏は文士として憧れ中の憧れでした。その人が唐突に自衛隊駐屯地で自決したと聞いてわが耳を疑いました。しかし程なくして事件の様子が分かってきて死が事実であることを知り、何だか分からないながらもひとつの時代が終わってしまったような漠然とした感覚を持ったものです。
その感覚とは、戦後の文壇を圧倒的にリードしてきた天才作家が未来社会について私のような凡才に語ることなく突然いなくなってしまった、というある種の喪失感でもありました。そんなことも忘れがちになりながらすでに40年以上が経過してしまいました。
そして最近読んだある書物にひょっとすると三島由紀夫氏の人生観に触れる手がかりになりそうな箇所を発見しました。私は三島由紀夫氏のいわば過激な行動の背後にあるそういった諦観らしきものを読み取ってはおりませんでした。私はいまこのことを具体的に説明できるように真剣に考えております。