身だしなみを普通に考えるとまず衣服、ハンドバッグ、指輪やネックレス、時計そして帽子という順序でくるでしょうが、私は最も大切なのは靴だと思っています。
最近は日本人の靴は綺麗に磨かれていて踵もすり減っていませんが、以前はヨーロッパやアメリカから帰ってきてまず気になるのが手入れの行き届かない靴と街の電柱でした。皆さんが欧米に行ったときに気をつけていただくと分かりますが地位と靴は比例するようです。
私のパリの友人はお金持ちの家庭の息子さんでした。靴はシャンゼリゼ通りにある有名店のもので30年以上前で10万円近い値段でした。それを長い間お金を掛けて修理して履いていました。ついつい貧乏人の私は新しい靴を買った方が安いのにと言ってしまいましたが、それで彼の流儀が変わることはありませんでした。
このようにどうも西欧人は靴にはこだわりのある人が多いようです。アメリカのある大学の学長さんも来日する際にはちゃんと綺麗な立派な靴を2足余分に持ってきていたことを記憶しております。
今でこそ山手線につながる私鉄の乗客の間に靴の品質と手入れの良さはあまり違いはありませんが、かつては大きな差異がありました。考えたこともなかった、住民の生活意識が私鉄各線で違うことに気づくきっかけでした。外国に行くということは新しい「気付き」のきっかけを与えてくれるものです。
アルプスで見つかった5000年以上前のアイスマンは革の靴を履いていたようです。私たちはずーっとワラジだったのですから靴に対してこれまで気がまわらなかったのは当然でしょう。
最近は靴に関して考えることがあります。女性をセクシーに見せるにはルイ14世張りの超細身のハイヒールだけではなくてどんなデザインがあるのでしょうか。先日そんなことを思いながら車内の女性の靴をじっと見つめていたら睨み返されました。
まったく他意はありません。とってもセクシーなデザインに魅せられていたんです。でもゴメンナサイ。