日本の私立医科大学は授業料が高いことが特徴です。先進国の中では極めて不思議な存在のひとつといえます。人間の命はお金では買えないといいますが、日本では命を預かる医師の地位はある意味ではお金で買えます。
自治医科大学と産業医科大学は実質的には公立ですから、日本の私立医科大学には昭和20年代に設立された旧設医科大学9校と昭和40年代後半設立の新設医科大学14校の合計23校があります。ちなみに現在は医学部・医科大学は全国に総数80校があります。
旧設医科大学は年間授業料は比較的低い方ですが新設医科大学では軒並み500万円以上となっております。その他の施設拡充費などの名目で徴収される費用を含めると年間支払総額は1000万円以上になる大学もあります。とにかくどの私立医科大学に入学しても医師になるまでにはおよそ一億円必要であると考えられます。
そんなわけで私立医科大学卒業後はなるべく割のいい仕事に就こうと思うのは仕方がありません。負担の大きい地域医療に来てくれといっても無理な話ですから、いくら給料をあげても病院勤務医が見つかるはずがありません。そんな事情から近頃は医師不足を理由に医科大学新設の機運があります。
医学教育から開業医制度にいたるまで地域医療を柱にして抜本的な改革に手を付けないで、小手先の医科大学新設で乗り切ろうとしても日本の医師不足は解消しないでしょう。それならむしろ外国の医師に門戸を開放してみたらいかがでしょうか。