大学には文部科学省の厳しい定員制が敷かれています。文科省の監視下のもとで毎年の入学生数は定員を超えることは許されません。ですから私立大学の入学試験発表に際してはどのくらいの合格者数にするかは経営者の腕の見せどころです。
普通の私立大学では競争率が3倍を下回ってくるとほぼ全員入学の意味合いを帯びてきます。ですから学生の質を確保するためには競争率3倍を確保するのが常識的には広報活動の至上命令ということになります。
私立大学はこれまで入学試験の受験科目数を減らして受験生の負担を軽減し、志願者数の減少に対応してきた面があります。しかし、その受験科目削減対策も行き着くところまで来てしまいましたから、今後はどうするか頭を使わざるを得なくなっています。
私の経験からすると入学試験をするならば共通一次試験より易しい学力試験とテーマを与える課題作文で構成されるのが望ましいと思われます。学力試験は落とすためのものではなくて基本的な常識の有無を確認できれば十分でしょう。そうすれば受験勉強に過大な負担がのしかかることを和らげることができます。
課題作文はなかなか点数評価をするのは難しいように思われますが、実際に受験生の小論文を採点してみると採点者の間で大きく評価が分かれることは稀です。採点が割れた場合には採点者間の協議となりますが妥当な結果に落ち着くものです。
今日では私立大学ではとても入りやすい状況が出来上がりつつあり入学試験は形ばかりの場合も少なくないと思われます。そこで思い切って大学の定員制を廃止して取りたい数だけ入れられるようにするのも面白いと思います。もはや定員を埋めるのに四苦八苦する大学はこれですぐに淘汰されるはずです。
ただ二つだけ条件があります。従来からの定員のオーバー分の学生には学費を半額にして転学も自由にする制度を同時に導入することです。定員の2倍の学生を入学させれば定員分の学生は授業料が半額で済みます。もしそれで不満な学生は転校すればいいのですからいい加減な事はできません。
今日のいわば護送船団によるみんなで渡れば怖くない方式の制度では大学の独自性や努力が形として顕在化してこないために大学間の厳しい個別競争が生まれにくい状況にあります。定員制を廃止して大学の本気競争をこの時期に図るのもいいのではないでしょうか。