大学生の就活が12月1日に解禁となって合同説明会は盛況を極めているようです。その様子からは大学生の必死さが見て取れますが、何か異様な雰囲気でもあります。何千人もの大学生全員がリクルートスーツに身を固めて会場に押し掛ける様は就活に翻弄される現代の若者の自主性のなさにも一因があるかもしれませんが、それだけではなさそうです。
このような異常な状態を作りだしている元凶の企業側の消極性には目を覆いたくなりますが、その流れに迎合するかのようにむしろ有害とも言える模擬面接訓練やら就活セミナーを積極的に展開して学生を追い立てている多くの大学も情けない存在に成り下がりました。
昨夜朝日テレビで「オリンピックの身代金」という印象深いドラマが放映されました。その中で爆破犯人が大学に逃げ込んで官権の追跡を逃れる場面がありました。東大の安田講堂事件以前には大学は学問の府としてもっとも高度な自治で守られていて官権の手の及ばぬ場所でしたが、今日ではその気高さはあまり感じられません。
大学が政府・官庁の顔色をうかがいながら教育という名のもとに若者を自分たちの都合に合わせて利用するようになったのはいつ頃なのかは分かりませんが、少なくとも黒いリクルートスーツに身を包んだ無数の学生が右往左往しなくなったときこそ本当の大学教育が日本に根付いた時ということが言えるのかもしれません。