ある看護師さんが確か医師のご主人と一緒に個人でホスピスを立ち上げて行き場を失った路上生活者のお世話をなさっている様子がドキュメンタリーで放映されていました。
ご夫婦の日ごろの大変な様子がつぶさに見ることができてとても感動的なものでした。肉体と精神を極限まで消耗する尊いお仕事であることが視聴者にはストレートに訴えかけてきました。
しかしこれは社会が責任を持って背負うべき問題であり、ご夫婦のような善良な個人に任せて解決した気持になっていてはいけないと考えるようになりました。つまり社会の矛盾の縮図のようなこのケースを感動物語として描くジャーナリストの感覚に違和感をもったのです。
私はかのマザー テレサを心から尊敬しております。その気持は彼女のベッドと机しかない小さな居室兼寝室を見てからでした。そして彼女のような強固な意志と比類のない勇気と広い心を持っていたら、私も彼女のような活動をしたいと幻想を抱いたりします。
放映されたような立派なご夫婦やマザー テレサが何人現れようとも多くの社会の矛盾を個人の力に委ねていてはなりません。個人や家族や親類縁者にそのような矛盾の負担を強いるのではなく社会が対処する仕組みを構築していけるよう少しでも声を出しましょう。