私がフランスの地方に住んでいたときに、何でも私の側についてくれる80歳を超えたお婆ちゃんが二人いました。
一人は広大な麦畑の中のお城のような館に農夫を雇って一人暮らしをし、もう一人は気の合う友だちを家政婦として同居させて生活していました。
ひとりは、私がパリに出るときは館の居間の窓から大きなテーブルクロスを一生懸命に振って、通過していく列車に乗る私にいつも合図をしてくれました。
もうひとりは、とっておきの肉を手配して私が好物のローストビーフを焼かせ、シャンペンを使ったフルーツポンチで度々歓待してくれました。
二人とも異国からきた私と他愛もない四方山話をするのが唯一の楽しみだったようです。